滋賀大学 河本薫 教授インタビュー VOL.2

はたらくことメディア

はたらくことメディア 河本薫

「感謝は僕の原点」努力と謙虚さが人生を変える出会いを生む。河本薫教授に学ぶ、自分自身の人生と向かい合い 信念を持つ人の強さとは。

2020.3.23

河本薫 プロフィール

京都大学工学部数理工学科卒業。
京都大学大学院工学研究科応用システム科学専攻修士課程修了。
大阪大学工学系研究科エネルギー環境工学博士課程修了。
神戸大学経済学研究科博士課程修了。博士(工学、経済学)。
1991年大阪ガス入社、1998年7月米国ローレンスバークレー国立研究所客員研究員、
2000年大阪ガス復社後2011年同社ビジネスアナリシスセンター所長、
2018年滋賀大学データサイエンス学部教授、データサイエンス教育研究センター副センター長

<受賞歴>
2013年9月 日経情報ストラテジーが選ぶ初代データサイエンティスト・オブ・ザ・イヤー
2014年3月 日本データマネジメントコンソーシアム データマネジメント大賞(大阪ガスとして)
2015年11月 企業情報化協会 IT総合賞(大阪ガスとして)
2015年11月 情報処理学会 デジタルプラクティス論文賞
2016年10月 情報化促進貢献 経済産業大臣賞(大阪ガスとして)
その他受賞歴多数。

ビジネスで培った実践的かつ豊富な経験と、一貫した理念の元組み立てられる講演は多方面から講演依頼が後を断たない。
現在は滋賀大学データサイエンティスト学部で「データサイエンスを強みとするビジネスパーソン」たちを育て、枠に囚われない自由な発想で活動し続けている。
<著書>
会社を変える分析の力 (講談社現代新書)
最強のデータ分析 なぜ大阪ガスは成功したのか (日経BP)


前回の記事はこちら

全てが逃げ逃げ逃げの人生でした。でもある時、歯車が変わった。

ー ここからは人生のストーリーについて聞かせてください。河本先生は子供の頃はどんな子でしたか?

コンプレックスのかたまりでしたよ。
身体が弱く、小児喘息で入退院を繰り返していましたし、運動ができないどころか虚弱体質という感じで、中学ぐらいまでずっとそういうの引きずっていました。
やっぱり運動ができないっていうのは、運動会の時とかに本当に居場所がなかったんですよ。
昔は運動出来る子がヒーローで、運動ができないと立場もなかったので、子供心ながらにとてもコンプレックスでしたね。子供心ながらに「運動ができるものが無いんだから、勉強ぐらいするしかないやん」。という消去法的な感じで勉強を頑張っていた感じがありましたね。(笑)

― そこから勉強に力を入れていったんですか?消去法とは、今の河本先生からは想像もつきませんね。(笑)

というよりも、僕は全てが受け身だったんですよ。
「”運動ができないから”勉強をした」。目の前に中学校があっていじめられっ子がいつも大きな荷物を持たされていじめられていたのを見て、「”僕は絶対に公立の中学に行っていじめられたくないから”私学の中学に行った」。そして、大学受験の時も進学指導の先生に相談したら、「偏差値も就職も変わらないけど、こっちの学科の方がどうも入ってから楽そうやで」って言われたから入った」。といった具合でした。就職に至っては 、「”大学でやってきたことに自信がなく、大学でやってきたことからできるだけ逃げたいから”、大阪ガス」っていうね。(笑)
全部そうなんです、全てが”逃げ逃げ逃げの人生”で来ていました。
就職して大阪ガスに入り、コンピューターとは全く無縁のモノ作りの部署に配属され、名古屋のメーカーから運ばれてくる試作機を滑車であげてトラックから降ろして、配管つけて、計測してとかそんなことだけをやっていたので頭を使わないんですよ。初めは何も考えてへんから、違和感も感じずにいたんだけど。入社した年に、父が脳腫瘍で急に喋れなくなり、 翌年に亡くなりました。それで母も看病疲れで倒れてしまって。 うちは父も母も両方同時に病や最後の時が来てしまったんです。
それまでは、逃げの人生で大阪ガスに入社して、「後はとりあえずそっと人生を送ろう」と思っていましたが、両親の事をきっかけに人生の歯車が変わり「俺はこのままでええんか?」と、負の意識が芽生えました。自分で何が出来るのかもういっぺん考えないといけない、そこで初めて自分とは何かと考えました。
人生に対して、受け身から攻めに少し変わってきたっていうのはそこからですね。
でも、そこからが大変だったんですけどね。(笑)

― 切り替わるポイントがあったんですね。攻めの方向に変わる時、周りの状況や会社の状況で自分のやりたいことが実現できるかといったらなかなか難しかったのではないでしょうか。

高校の時、友達によく言われたのが「河本、勇気と無謀は別だって覚えておいた方がいい」って言われていました。(笑)
要は無謀なんですよ、人から見たら、とんでもなく無謀な事をしちゃうんです。でも、人から見たら無謀で誰もしない事をするからこそ、それが結果的に突破口になったりするんです。普通じゃありえへんような人生のジャンプができちゃうものですよ。普通のキャリアで考えたら、いきなりこれは無理やんっていうポジションを無謀にも獲得してしまったりするんです。
それは傍から見たら、きっと超図々しい行動なんですよ。でも僕からしたら全然図々しさは持っておらず、ただひたすら ピュアにやってるだけなんですけどね。 (笑)

— その行動力はどこから来るんですか?やりたいと思っていても、なかなか動かない人も多いです。

逆に僕は動かない人がなんで動かないんだろうって不思議に思うんです。自分にとっては行動することに何か理由があるわけでは無く、自然な事なんですよ。
強いて言うなら、行動したらうまくいったというラッキーな体験をしたということが板についてきたからなのかもしれないですね。

― 成功体験は大切という事ですね。突破力、行動力、推進力、素晴らしいです。生きる上でもっていたら良いスキルはなんだと思いますか?

僕の著書にもありますが、接する相手がどのような気持ちでそれを受け止めるのかという事を理解する事もスキルのひとつです。でもそれってね、あとからつけるのは本当に難しいんですよ。
たった一度の人生なので、ただ生物的に寿命まで生きるのでは無く、生きて良かったと楽しむという事が人生だと思います。そういう意味でも自分はどんな人生を送りたいのかということと常に真正面に向かい合って生きて欲しいですね。そして、「私はそんなにアグレッシブに生きるのでは無く、穏やかに生きたい」というのも尊重すべき人生感だという事も忘れないでほしいです。

はたらくことメディア 河本薫
はたらくことメディア 河本薫

あらゆるものはデコレーションで、僕は僕でしかない。

ー では、大学生になるまでにどんなことを備えているのが理想的ですか?

学生から社会人になった子を見たときに、あかんな~と思うのが一般教養が無さすぎるんですよ。一般教養がなかったら、自分で問題定義ができないんですよ。そこは大きい気がしますね。リベラルアーツといわれるのですが、日本の大学ではあまり重視してないんじゃないかと思います。
べたですけど、本を読まされるのではなく、たくさん読んで、自分で著者に対して考えや反論出来るような思考力や教養を身に着けると良いですね。

でもね、笑い話なんだけど僕は大学受験の時、国語が苦手だったんですよ。共通一次という200点満点の模擬テストがいつも二桁だったんです。(笑)東大は国語が二次テストまであるのでこれはあかんと思って、京大に行きました。
それで社会人になり、一冊目の本を書いた後、ある時郵便が来て、「あなたの本から大学の過去問を作るので、著作権をかしてください」と書いてあり、その中に入試問題が同封されていて、確かに僕の文章があるんですよ。だから解いてみたんですよ、すると第四問目くらいに、「下線部について作者はどう考えているでしょうか」と書いてあるんですよ。“作者って誰?俺よね?”って。でも四択あんねんけど、答えが無いんですよ。“だって、俺なにも考えずに書いたよ?”って思って。(笑)
その時に初めてなぜ自分が国語ができなかったか気が付きました。国語って作者がどう考えているかを問う問題じゃないんですよね。“質問出題者は作者はどう考えていると思っていましたか?”という問なんですよね。それに気が付かずに、ずっと国語がダメでした。(笑)

— 素晴らしい本を書き、講演もなさる。それが国語が苦手だったなんてびっくりです。これはもう、多くの人に知って欲しいです。(笑)
では、成績が良いことそうでない子の違いはなんですか?

うーん、わからないなぁ。自分自身は勉強の成績は良かったですよ。だって、僕は運動ができないから勉強をするしかないと思っていたんで。でも大学に来て思うんですけど、単純に成績が良いから良い、悪いから悪いってそんなことなないんですよ。とがったものがある人って、とがったところは成績が良いけど、それ以外はが悪かったりもします。だから漠然と広く点数をとっている人が成績が良く映ったりする部分もあると思います。日本の教育機関における成績の定義とは、学校の先生が決めた形式的な評価システムに基づいた評価ですから。
でも、成績というものがあるからこそ勉強が続くというのは大いにある。インセンティブでも良いんですけど、学ぶモチベーションをどこに持たせるのかということが大切だと思います。もし成績がなかったら、学ぶモチベーションが続かないじゃないですか。だから成績ってすごく大切ですよ。

― 挫折や人生には上手くいかない時はモチベーションを続かせるのが難しい時もあります。人生の壁や迷いに対峙した時、どのように展開していきますか?

僕の場合、意外と開き直れる人間なんですよ。開き直れないと苦しみが究極に至って、自分であの世にいってしまったりもする。でもそれはダメなんですよ、生きてるだけでええやんって。最後の地獄のとことんまで落とし込まれたときは、そういった思いを持てるかどうかっていうのは大切だと思います。例えば、あらゆる財産や名誉も全て奪われたとしても、それは単に僕にとってデコレーションであって、僕は僕だと開き直れたらいいかもわかんないですね。
生きてるだけでいいなんて思えたら、人生って何やわからんけど、いけるかなと思っています。でも強い人っていうのはそういうものをお持ちですよね。

― 生き方に対して一番のこだわりを教えてください。

うーん、我がままというか、自分で言うのもなんなんですけど、どこか純粋なところがあって、自分の心をごまかすのが苦手なところがあります。仕事でも、使命感を大切にしています。
でも、使命を全うしたいという思いと現実の仕事というのは当然100%は一致しません。そこをなんとかして、自分のピュアな使命感に一致するようにするためにはもの凄いエネルギーをかけてしまいます。そのためにはなんでも犠牲にしてもいいぞっていうかね、地位や名誉なんていらへんし、給料とかいらへんし、ってそんな感じでやってしまう。
でもその結果として色々なものがついて来ています。

はたらくことメディア 河本薫

次回VOL.3では、これから人生を描いていく次世代やそれぞれに頑張る大人たちに向けて、人生が上手くいくためのヒントをアドバイスして頂きました。
穏やかな河本先生の言葉は、今を懸命に生きる人たちの心にスッと染みるように届くことと思います。


写真:旦悠輔(旦悠輔事務所)
取材・文:小川圭美

関連記事

アーカイブ

カテゴリー