滋賀大学 河本薫教授インタビューVOL.3

はたらくことメディア

はたらくことメディア 河本薫

「感謝は僕の原点」努力と謙虚さが人生を変える出会いを生む。河本薫教授に学ぶ、自分自身の人生と向かい合い 信念を持つ人の強さとは。

2020.4.13

河本薫 プロフィール

京都大学工学部数理工学科卒業。
京都大学大学院工学研究科応用システム科学専攻修士課程修了。
大阪大学工学系研究科エネルギー環境工学博士課程修了。
神戸大学経済学研究科博士課程修了。博士(工学、経済学)。
1991年大阪ガス入社、1998年7月米国ローレンスバークレー国立研究所客員研究員、
2000年大阪ガス復社後2011年同社ビジネスアナリシスセンター所長、
2018年滋賀大学データサイエンス学部教授、データサイエンス教育研究センター副センター長

<受賞歴>
2013年9月 日経情報ストラテジーが選ぶ初代データサイエンティスト・オブ・ザ・イヤー
2014年3月 日本データマネジメントコンソーシアム データマネジメント大賞(大阪ガスとして)
2015年11月 企業情報化協会 IT総合賞(大阪ガスとして)
2015年11月 情報処理学会 デジタルプラクティス論文賞
2016年10月 情報化促進貢献 経済産業大臣賞(大阪ガスとして)
その他受賞歴多数。

ビジネスで培った実践的かつ豊富な経験と、一貫した理念の元組み立てられる講演は多方面から講演依頼が後を断たない。
現在は滋賀大学データサイエンティスト学部で「データサイエンスを強みとするビジネスパーソン」たちを育て、枠に囚われない自由な発想で活動し続けている。
<著書>
会社を変える分析の力 (講談社現代新書)
最強のデータ分析 なぜ大阪ガスは成功したのか (日経BP)


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努力と謙虚さは人生を変える

— このメディア活動を行う中で、進むべき道に迷う事もあります。そんな時に河本先生のお話を聞き、こんなにピュアに人を育てる事に注力している人がいる。真っ直ぐに何かを全うするという事に希望をもらえました。

その点で言うと、僕は仕事に対して情熱を持ててることが一番幸せです。それが無くなる可能性っていうのは十分あるし、情熱を持てずに仕事をしている人もごまんといるやないですか。使命感に則り仕事をさせてもらっている自分は幸せです、だからとても感謝している。その感謝のエネルギーでまた仕事をする、今はそのサイクルで回っています。
ただ、僕の場合はそれがうまくいきましたが、いきなりそれを狙うというのは難しいですよね。食べていくために仕事をしていくというのは現実だし、そのバランスは自分でとっていかなくてはならない問題ですね。

— 仰る通り、「あれ?今なんでこれやっているんだろう」となっている若手は多いと思います。学生の頃は希望があって入社するけど、入ってみたら全然違うなどもありますし、学生であれば「何のためにこの勉強をするのか?」など。何故これをしてるかと迷っている人は案外多いです。

自分は全然そんな事を考えて生きてきたわけでは無いんだけど、今人生を振り返ってなぜ上手くいったかというところからの後付け的なアドバイス。
ひとつは、人生って一人で切り拓けるものではなくて、人との出会いで切り拓けるんですよ。そうした出会いは人の話しを聞こうという姿勢から生まれるます。それって結局、謙虚さなんですよ。
人間は会ってすぐにぱっと見た感じで感じる生き物です。だから「こいつに言っても聞く耳もたへんな」と思ったらチャンスは無くなる。それはただ物理的に会っているだけであって、本当の意味で人との出会いにはならならないんですよ。
ふたつめは、準備です。常に精いっぱい頑張っているとたった一回の出会いがあった時に物事が大きくジャンプするかもしれません。常に精いっぱい努力しているから、チャンスが来た時にはいつでも準備が出来ているという事です。努力と謙虚さ」このふたつが才能に溢れた人間でない場合の生き方かなと思いますね。
努力と謙虚さと言うと、まるで頑張って勉強をするという風に思いがちですが、僕は努力と謙虚さが人生を変える人との出会いを生むと思っています。

— これから人生を描いていく若者にも、日々頑張っている大人たちにも気づきある素晴らしいメッセージですね。

子供は親の職業に影響を受けますが、それ以外にも良い意味でも悪い意味でもそれはとても限定的な影響であります。だから大人の生き様にいかに多く触れられるかというのも大切な事だと思います。やっぱり良い人、良い大人と触れ合う方がいいじゃないですか。
更に言うと、人が育っていく上でより良い環境にいられるという事は重要です。
日々の努力や謙虚さというものは、ある時人との出会いがあった際に受け取れるものが変わると思います。

はたらくことメディア 河本薫
はたらくことメディア 河本薫

あるイベントで河本先生がゲストスピーカーとして登壇なさった時の第一印象は、「なんて面白いんだろう!」というものでした。実は「大学教授のスピーチか、会場も暗いし眠くなりそう…」なんてとんでもなく失礼な事を考えていた私は、本当に驚いたのを思い出します。(河本先生、すみません!)一貫性があり、多くの人が理解することが出来る表現、温かみのある語り口は聞く人を一気に引き込むパワーがあります。

インタビューの際、仕事の内容については一寸の迷いも無く話されている様子でしたが、「仕事とはなんですか?」という質問に対しては「うーん、うーん、僕にとって仕事とはなんなんやろか。」と、とても悩まれ、そこから丁寧に言葉を紡ぐ姿が印象的でした。それは、河本先生の話す言葉ひとつひとつに責任が感じられた瞬間で、真っすぐな使命感と情熱に溢れていました。この「使命感」と出会うには、自分がどんな人生を生きていきたいのかという事と真っすぐに向かい合うことが必要になってきます。それには時に痛みや苦しみを伴い、一度向き合ったら終わりではなく、常に自身に質問を繰り返すことでしか自分の中の「使命」や「信念」という答えとは出会うことができないのです。
一度出会った「信念」は、自分自身の大きな軸となるでしょう。しかし河本先生は「自分とは別の価値観もまた、尊重すべき人生観である」と仰いました。信念を持つほどに、自分とは違う価値観に対しての許容量を減らして世界を小さくしてはいけません。何故なら、本質的に多様性を認め合えるからこそ素晴らしいシナジーが生まれると思うからです。

多くの人が自分自身のおかれた環境や今ある姿に悩み、不安に駆られる事があります。しかし、その行動が「やりたいこと」であり、情熱と共に自身が努力すれば「やれること」だと確信がもてることであれば、結果は行った先についてくるものなのかもしれません。そして、そこには確固たる「やるべきだ」という信念があるはずです。

皆さんの信念とはなんですか?

写真:旦悠輔(旦悠輔事務所)
取材・文:小川圭美

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