DataRobot Japan 坂本康昭さんインタビューVOL.2

はたらくことメディア

はたらくことメディア 坂本康昭

失敗しても良い、経験を経て世界は拡がっていく。DataRobot Japan 坂本さんに学ぶグローバルで自由なマインドセット

2021.5.14

坂本康昭 プロフィール

DataRobot Japan
DataRobot データサイエンティスト。
2005年にテキサス大学にて認知科学博士号取得。
スティーブンス工科大学にて教授、データサイエンスプログラム立上げメンバーとして貢献。SNS上の情報共有に関する研究を含む50を超える学術論文を出版。
2015年帰国後、外資系大手保険会社にてチーフサイエンティストとしてデータサイエンス部門の立ち上げ及び AIの応用に従事。
2017年より米国発DataRobot社のデータサイエンティストとして金融、ヘルスケア、製造など様々な業界のお客様をサポート。
アメリカのデータサイエンス黎明期を知るデータサイエンティスト。


「今の仕事が大好きだ」と言う坂本さんが現在所属されているDataRobot Japan.
企業のAI、DX化を劇的に加速させるツールとして世界中から注目されています。 DataRobotは独自の優れた教育システムをもち、業界に優秀なデータサイエンティストを輩出しビジネスインパクトを出し続けています。しかしまだまだ日本には知識や経験を兼ね備えたデータサイエンティストは圧倒的に足りていません。

人間の力を最大化するためのお手伝いをするのがDataRobot

ー DataRobotという会社について教えてください。

DataRobotは、アメリカのマサチューセッツ州ボストンに本社をもつ、エンタープライズ向けAI プラットフォームを提供している会社です。
データ分析には、機械的に何度もなんども繰り返すという作業があります。
そういうところを自動化し、
「データサイエンスという高度な分析や技術を プログラミングや統計などの専門的な知識を得ることなく誰もが使える」
そんなツールを作っていこうと、その分野の会社で働いていた人たちが立ち上げた会社です。


うーん、少し難しいでしょうか。
例えば、車でもし事故起こしたら、保険会社に連絡をすると思います。
その時、出来るだけ早く保険会社から支払いが来たら嬉しいですよね。人が時間をかけて色々な調査をせずに、機械学習が自動的に「はい、これは大丈夫です。支払います。」としてくれたら?
そういうものを私たちは目指していて、 企業の意思決定が早くなるように機械で支援をし、個人であるお客さんは早くサービスを受けることができてハッピーになる。
そういったエコシステムを作りたいということがヴィジョンの会社です。


データサイエンティストたちには様々な業務があります。
そのなかでも”繰り返しやるようなシンプルなもの” と
”人間がちゃんと考えなければできないもの”があります。
だったら「簡単なものはDataRobotが担いますから、人間のデータサイエンティストはヒトが考えなければできない難しいことにより時間を使ってもらって、精度を上げてもらおう。」
それが始まりでした。


ー 専門的な知識が無くても機械学習ができる、分析ができるということですか?

はい、データを作って入れると結果が出てきます。
うまく使うためにはポイントは2つ。

1.分析にかけるためのデータをうまく作れるか。

データの前処理といわれる部分です。
分析するためのデータをどうやって上手く作るかというところがまず重要になってきます。
英語だと「 Garbage in Garbage out 」と言うのですが、 「ゴミのようなデータを入れても出てきた結果もゴミですよ」という意味です。
そこが一つの重要なポイントです。

2.出てきた結果をきちんと解釈して、意思決定に使えるようなものする。
分析をするために重要なデータの前処理というのは例えるなら、料理のような感じです。
寿司職人が「良い魚を市場で目利きして、良い包丁で修行した熟練の技で捌く」というお寿司を握る前に前処理(仕込み)があると思うんですけど、そこの部分を自動化してくれますよということなんです。
前処理をするために必要な統計とかプログラミングなどの専門的な知識はあればもちろん役にたってくるというのはありますが、別に無くても大丈夫ということです。

ー なるほど、前処理が間違っていてはどうやっても良い結果はでない。
  そこをDataRobotが自動化するから、人間はより心と頭を使う部分にフォーカスしてねという感じでしょうか。なんだか、AIや機械学習というものに対して、見え方が変わります。
  坂本さんの現在担当されているのはどんなお仕事ですか?

仕事内容は限定せず幅広くやらせていただいていますが、ひとつはDataRobotのプリセールスです。
「御社の課題ここですか、ではこういうデータがあるのでその課題こうやって機械学習で解けますよ」

「じゃあ分析してみましょう結果が出ました。」


「事業部の人達を集めて具体的にこんなアクションを取りましょう。」
というところまでお手伝いします。

ー これも「DX」ですか?

そうですね、そのひとつです。「DX=デジタルトランスフォーメーション」
進化していく技術を 会社として取り入れていくということですね。

— とにかくAIでなんかやれといような少々乱暴な事も聞きますが、実際はどうでしょうか。

現場が良くできると、上からのそういったオーダーもうまく調整してくれるから大丈夫なところもあります。
でも 現場に新卒や第二新卒の若い子達だけを集めて、そこからはじめてデータサイエンスをやっていくと経験がないので、上からのオーダーにハマってしまうんですよね。「やれ!」と上から言われてるから現場はやっているんですけど、何も成果が出ず、それが1年2年続いてその部署自体がなくなってしまうというのはあります。
それではもったいないんです。やっぱり経験がないと、結果が出てきた時にそれをどのように使ったらいいかわからなくなってしまうということのもあるので、そこはトレーニングです。
ですが、そういったトレーニングなどを教えてくれるような所はあまりないんですよね。

はたらくことメディア 坂本康昭

—その点で言うとDataRobotはデータサイエンティストの教育もされていますよね?

 DataRobot University(DRU)という データサイエンスを実運用をするというところに力を入れています。データサイエンスの技術については、海外のものも含めて色々な本が出ているのでそれをまとめると学ぶことはできるんです。
でも運用のところというのは教科書がありません。
だからデータロボットが独自でカリキュラムを作り、学べるようにしました。

ー どんな専門家でもそうですが、データサイエンティストの質にもばらつきがあるように思います。
  それは日本だけで起こっていることなのでしょうか。

それは海外でも起こっています、定義もしっかりしていませんからね。いろんな人がデータサイエンティストと名乗っていますよ。
でも日本にはデータサイエンティスト協会がありますから、きっちりとレベル分けされ始めている思います。
 DataRobotでは定義があり、実際に運用まで行った経験数など明確に分けられています。
例えば「アプライドデータサイエンティストアソシエイト」というようにでデータサイエンティストという名前は入っていますが「アソシエイト=勉強中です」となります。
それでメンターと一緒に半年から一年を実際にやってみて、”データサイエンティスト” になっていく感じです。

知識を学ぶタイミングが重要

ー DataRobotの中では段階を経て経験をもつ質の高いデータサイエンティストに育てていくということをされているんですね。

技術の部分はAI Academy でやっています。こちらでは Python だったり言語も学びます。
「DataRobotを使うにはコードかけなくてもいいよ」と先程言っていますが、プロのデータサイエンティストとしてやっていくとなると、その知識は必要にはなってきます。
そして知識をどのタイミングで学ぶのかということが重要だと思います。

大学で教えていた時、2年の修士プログラムを作っていたのですが、数学プログラミングの知識が無い方が入ってくると、プログラミングを学ぶのに2年間かかってしまって「どうやってそれを応用するのか」ということを学ばないまま卒業してしまうことになるんです。
そうすると就職してから「雇ったけどこの人使えない」ということが起こり「最後の一年でいいので、どうやってビジネスに応用するのか適用させるのかということをきっちり教えてください」というコメントをアドバイザー企業からいただきました。

では実際に応用の時間をとるにはどんな流れが良いのかと言うと、2つのパターンがあります。
1つ目は、数学やコンピューターサイエンスで学士を取った人がデータサイエンスを学びに来る。
するとコードを書くなど手を動かせるので1年ぐらいでデータの前処理をして機械学習を学び、残りの1年で応用を学ぶというパターンがつくれます。
2つ目は、1つ目とは逆のパターンで、会社で既にデータアナリストやデータを少しいじっている業務をしている方が プログラミングと数学だけ学ぶ。
どうやって応用するのかという点については実際に働いていてビジネス自体も分かっていますからね。

ー どちらのパターンが優秀なデータサイエンティストとして育つのでしょうか。

実際に社会に出てインパクトを出していたのは後者(2つ目のパターン)ですね。
ビジネスをやっていたマネージャークラスなどでは、既に何が課題でどのようにしたら解けるのかということを実体験で分かっていますから。

技術的にどっちが優秀かと言ったら、やっぱり数学コンピューターサイエンスを学んできた人たちなんですけど、そういう方達は大学の研究所や、会社の研究所だったりとかはすごくいいと思います。しかし会社にお金を持ってくるっていう意味だと、 技術面が面白くてそこに時間を費やしすぎてしまってビジネスインパクトは出しにくいというのがあるかもしれません。

はたらくことメディア 坂本康昭

ー 優秀なデータサイエンティストになるには?

これからの時代は正直、 Python や R を使うのではなく、DataRobotのようなツールを使ってデータサイエンスをするでもいいと思っています。わざわざ言語を書ける必要はないと思います。

 昨今はPythonを学ばれている方、多いですが使えなくても良いということですか?

いえ、違います。
データサイエンスへの入り口が、全て「先ずは言語から」である必要は無いよね」ということです。
例えば会社で働いている人だったらビジネスインパクト成功事例を作っていったら、あるタイミングでちょっとした自由が生まれてくると思うんです。そのタイミングで「DataRobotって中身どうやって動いているんだろう」と勉強をはじめる。

会社への貢献を先にして、その後に自分の勉強してもいいんじゃないかなと思っていますね。
興味と経験がついてから学ぶ。
それはとてもいいステップで理想的なんじゃないかなと思っています。
では実際に応用の時間をとるにはどんな流れが良いのかと言うと、2つのパターンがあります。

ー これからデータサイエンティストになりたい人たちが学ぶにはどこがいいでしょうか?

まず何がやりたいかにもよりますよね。
アメリカで技術的なことをやりたいんだったらスタンフォードとか、カルテックとか、 MIT とか、楽しいでしょうね。
あとはどのレベルかでも変わってきます。
博士課程に行きたいのであれば、教授は重要です。

自分がついていきたい教授を見つけてそこに行くのが良いのではないでしょうか。博士まで行きたいとなると、ビジネス系ではないところが面白いと思います。
修士を2年間でやってくるのであればビジネススクール的なところもありです。
会社に戻ってきてそのまま何かするという知識を得られると思いますよ。

修士はビジネスのコンセプトの中でデータサイエンス教えてくれるので、技術に興味があるのであれば、四年間やって博士を取ってきた方がいいんじゃないかと思います。
修士と博士で教えるデータサイエンスは深さが違うんです。
どこからどこまでをやりたいかにもよりますが、自分でアルゴリズムを作ったりしたいと言うんだったら博士じゃないですかね。
ここは色々な生徒さんとも話したり、見たりしてきましたが、何を選択するのかというのもなかなか面白いところです。そしてやっぱりこれも、目標がなんなのか、自分がその先に何をやりたいのかというところが大切なんです。
私はドクターですごく時間を費やしたので、皆さんもっと早くできるんじゃないかなって思いますね。(笑)
今は Python 1年間勉強する代わりにDataRobotなどツールを利用することで、すぐにビジネスインパクトがとれますからね。

ー だんだん進化していくと言語を使わないデータサイエンティストも出てくるということでしょうか。

そうなると私はいいなと思っていますけどね。
ツールも日々進化して、種類もどんどんできてできているので、それをどれだけ使い倒して人とは違うことをできるのかというその発想力が大切に思います。この課題も解けるというクリエイティビティは人間にしかできないので。


「最短距離で目標地点に向かう方法」これは私も含め、みんなが知りたいことだと思います。
ネット上やSNSに情報が溢れかえり、そもそもどの情報が有益なのかということを精査することにさえ知識やスキルが必要な時代になっています。その情報をしっかりキャッチするには、目標が何なのかということを自分自身がよく理解している必要があるということです。

目を向けるべきところは、今している事ではなく、その先に何をやりたいのかということ。
自分自身が一体何をしたくて、何が強みなのかということがよく分からず迷ってしまいそうになることもあると思います。そんなときこそ、同じように悩み、今のところまで辿り着いたプロフェッショナルたちの人生経験が助けになってくれるのではないかと私たち「はたらくことメディア」は思うのです。

今回の坂本さんのインタビューは「はたらくこと」という概念からは少し外れた、データを扱うプロフェッショナルを目指す人々へのアドバイスも含めた質問をさせていただきました。その答えは、現在プログラミングをはじめ機械学習などを学び、これからデータサイエンスの道に進んで行きたいと考えている人たちにとって大変有益な指針となるのではないでしょうか。

次回は坂本さんのグローバルで人生を楽しむ自由な価値観に迫ります。

取材・文:小川圭美

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